株高に警鐘、現行の株高は実態経済から乖離

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BNPパリバ証券の経済調査本部長・河野龍太郎氏が、現行の株高はバブルの懸念があるとして警鐘を鳴らしている。株高傾向が続いていることや、米欧・中銀が金融緩和の出口を模索しているとは言え、世界的に見ればまだ緩和的な金融環境が続いていることが株高に繋がっていることもある。ここで注意すべきなのは、2000年代は労働需給が逼迫→賃金上昇→インフレ上昇加速→景気拡大のシナリオとなったが、今は景気拡大・労働需給逼迫となっても『インフレ上昇は遅れ』『賃金上昇の遅れ』が見て取れる。

また、各国の中央銀行による緩和政策により株価は押し上げられているが、『好景気を実感出来ない』と答える人が多いことからも分かるように、実体経済から株価が乖離している。実体経済から乖離した株価の上昇は、最終的に実体経済を巻き込む大きな調整、つまりはバブル崩壊をもたらす可能性があるという。

一方、日銀のETF買いについても河野龍太郎氏は再考が必要だとしている。日銀は『完全雇用状態で金融緩和を続けることで労働需給が更に逼迫する。そのことがビジネスプロセス見直しにつながり生産性上昇をサポート、結果として実質賃金や潜在成長率につながるとともに、インフレ率の上昇となる』と主張している。これに対し河野龍太郎氏は、過去とは違い、賃金の安い国で生産するなど現状の世界環境の動きを加味すると、賃金の上昇やインフレ上昇には繋がらない可能性を指摘している。

確かに、価格競争が激しい中、どの企業も生産コストは抑えたいであろうし、支出を出来る限り少なくしたいと考えると、自国で高い賃金を払い生産を増やすことよりも、安く生産できる、人件費の安い国でと考えるのは普通のことだろう。となると、人手が足りないから給与を上げると言うよりは、人でのある国で事業を拡大する方向に進むのも納得できる。

もちろん、世界株高の中、日本が遅れをとらずついて行くのに日銀のETF買いは有効であった。だが、ETF買いはコストの莫大な政策であり、日銀の目標とするインフレ上昇、賃金上昇が成果として乏しかったことを見直す必要があるのではないだろうか。

参考記事;http://jp.reuters.com/article/column-ryutaro-kono-idJPKBN1CZ0KE